中小企業のDX クラウド導入、IT導入のポイント 第3回 具体的な取組

設計
2021年12月15日


税理士法人あすなろの税理士 菅沼先生に、中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するにはどのように取り組みを行えばよいか、ポイントなどの解説を全3回に渡り連載いただきます。

今回は中小製造事業者における具体的なDXの取り組みについて、どこからどのように始めたらよいかを解説いただきます。

 

税理士法人あすなろ 菅沼 俊広

税理士業務の他ITコーディネータ等多数の資格を活用して民間企業・地方公共団体のIT調達、
情報セキュリティ対策、BCP体制構築支援業務に従事。

略歴
平成20年 税理士法人あすなろ設立 代表
平成20年 経済産業省J-SaaS普及指導員
平成25年 経済産業省経営革新等認定支援機関
平成27年 ITコーディネータ協会マイナンバー導入支援者育成研修WG委員会委員長
平成28年 IPA 中小企業の情報セキュリティ普及に関する委員会ガイドライン検討WG委員
令和元年 日本税理士会連合会コロナ対策相談室 委員
令和3年  東京税理士会デジタル化委員会 委員

「ビジュアル解説ITコーディネータテキスト(日本経済新聞社)」(共著)
わかりやすい IT導入・活用と税務-業務・業種・機材別 取引先・顧問先対応マニュアル-(新日本法規出版)(共著)

 

中小規模製造業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)

DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性は理解しているが、具体的にどのようにDXを進めていくかわかりづらいという声が多く、特に大企業での取り組み事例はよく聞くが、中小企業の取り組みについてよくわからないと言われます。

製造業は日本経済のGDPの2割弱を占める基幹産業であり、DX展開でも重要な位置を占めますが、大規模な製造業においてはスマート工場などのDXの取り組みが進んでいる一方で、中小製造業は大規模製造業と比較してそういった取り組みが進んでいません。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)では、中小規模製造業におけるDX推進の取り組みを加速するため、取り組み事例を調査し「中小規模製造業の製造分野における DX 推進ガイド」を発行しています。

中小企業特に中小規模製造業のDXへの取り組みについて、「中小規模製造業の製造分野におけるDX推進ガイド」に沿って取り組み方法を説明し、事例についても解説します。

 

中小規模製造業者の製造分野におけDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためのガイド

中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイドは、中小規模製造業の経営者やDXの取り組みを支援する方を対象に、具体的な製造業DX推進策を検討する際に活用することを目的として作成され、中小製造業におけるDXとは何かを説明し、次に自社における課題の抽出、課題を解決するためのDX推進策を自己診断ツールと推進ステップによって説明しています。

また、ヒアリングを行った中小製造業14社の具体的なDX事例を紹介しています。

 

図1 製造分野のDX推進ガイドの構成 ※1

 

製造分野DXの理解

製造分野DXの理解では、「製造分野におけるDX」を定義し、その目指す姿を解説、さらに今後中小製造業が発展するために「製造分野DXで重視すべきポイント:デジタル製造エコシステム」を解説し、「デジタル製造エコシステムを支援するDX」について解説がされています。

製造分野DXの定義は「顧客価値を高めるため、製造分野で利用されている製造装置や製造工程の監視・制御(OT)などのデジタル化を軸に、ITとの連携により製品やサービス、ビジネスモデルの変革を実現すること」とされていますが、これは「中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド」作成に先立ち行われた「中小規模製造業の製造分野におけるDXのための事例調査報告書」から明らかになった下記の中小規模製造業における課題から導かれたものです。

同報告書によると中小規模製造業における課題は、

・中小規模製造業は大企業の大量生産を支える垂直統合したサプライチェーンの中で、低価格・高品質・短納期という要求に対応。

・大量生産した同一製品が顧客に受け入れられるという状況は変化してきており、大量生産からスマートエ場やスマートマニュファクチャリングの目指すマスカスタマイゼーションを要求される状況。

・下請け構造から脱却し、個々の企業の強みを生かした水平方向の連携構造へ転換する。

・さらに高付加価値の可能性が高いコンシューマ製品を生み出す中小企業連合のサプライチェーンヘ拡張することが求められる。

というものでした。

この「顧客価値を高めるため、製造分野で利用されている製造装置や製造工程の監視・制御(OT)などのデジタル化を軸に、ITとの連携により製品やサービス、ビジネスモデルの変革を実現する」ための目指す姿として「スマートファクトリー」「スマートプロダクト」「スマートサービス」を例示し、最初は「スマートファクトリー」を中心に目指しつつ、一部は「スマートプロダクト」や「スマートサービス」に向けた取組みも進めておき、その後「スマートファクトリー」が順調に進んだ段階で、「スマートプロダクト」や「スマートサービス」の取組みをより強化していく、という方法をとると良いとしています。

そして、「スマートファクトリー」「スマートプロダクト」「スマートサービス」についてそれぞれの考え方と具体的な企業事例が説明されています。

「スマートファクトリー」「スマートプロダクト」「スマートサービス」は中小規模製造業が個社でできる取り組みであり、これだけでは競争上の優位を確立することが困難であることから、DXを活用してさらなる発展をするために企業間連携をデジタル技術やデータを利用したデータ連携によって確立する「デジタル製造エコシステム」について解説がされています。

 

図2 中小規模製造業の製造分野における DX により目指す姿 ※2

 

製造分野DXの目指す姿への推進(自己診断ツールと推進ステップ例)

上述の製造分野DXの目指す姿は、「スマートファクトリー」は、”業務のデジタル化”における実現例、「スマートプロダクト」「スマートサービス」については、“製品/サービスのデジタル化“における実現例となり、「スマートプロダクト」「スマートサービス」は顧客に対して新たな製品、サービスを提供する取り組みで、新たな売上拡大につながるもので、「スマートファクトリー」は自社または共同で製造を行う企業内におけるプロセスの最適化、効率化を目指した取り組みであり、今まで対応困難と考えていた顧客からの要求に応えることや、製造コストの最小化による収益の拡大につながります。

目指す姿の実現に向けた課題を特定するために、エクセルで用意された「製造分野DX度チェック」を以下の手順で利用します。

①現状把握:自社の現状の立ち位置を把握するために各項目の現状レベルを確認

②目標設定:自社の狙う立ち位置を把握するために各項目の目標レベルを確認

③課題特定:現状と目標値との差(ギャップ)を課題と設定

 

図3 自社のDX取組度合の評価 ※3

 

「製造分野DX度チェック」は、製造分野におけるDXを推進するにあたり評価すべき項目として①競争優位性の確立、②業務プロセスの最適化、③システムの構築・見直しの中長期計画、④データの収集と可視化、⑤データ活用・分析、⑥データ連携、⑦プライバシー、データセキュリティ、⑧外部資源の活用、⑨人材の育成・確保を用意し、各項目をレベル0:取り組みができていない~レベル3:変化に対応できる仕組みが構築できているの3段階で評価します。

この評価を行うためのツールとして①製造分野のDX進展レベルを現状と目標で確認するためのシートと②課題に向けた取り組み方策例のシートがエクセルで提供されています。

 

①製造分野のDX進展レベルを現状と目標で確認するためのシートを利用し、各チェック項目に対して自社がどの進展レベルを満たしているかを「現状レベル」、「目標レベル」の各々で選択します。

図4 製造分野の DX 進展レベルを現状と目標で確認するためのシート  ※3

 

次に、②課題に向けた取り組み方策例のシートを利用して、現状レベルと目標レベルとの差からこれから取り組むべき方策例を導き出します。

 

図5 課題に向けた 取り組み 例のシート  ※3

 

例として、⑤データ活用・分析のDX度チェックを行うと、まず、「製造分野について、要求する目的(機器制御、無人加工、営業・事務処理との連携、顧客価値向上等)に関する収集データの分析・フィードバックを適切なタイミングで行える仕組みが確立しているか。」について現状レベルと目標レベルを設定します。現状レベルが「0:データ活用・分析は行っていない。」目標レベルを「1:データ活用・分析の目的を明確にし、活用・分析をしているが、品質向上や生産性向上などの成果に繋がっていない。」とすると、課題に向けた取り組み方策例のシートを利用して、レベル0⇒レベル1の方策例「生産性、品質、故障予知などのデータ分析の目的を明確にする。」を検討することになります。

具体的な実践例としては、下記のように製造のプロセスの高効率化や品質の向上に向けた活動が多く見られます。

 

例1:(稼働の効率)加工機器などの稼働状況が可視化されることで次工程の手待ちを削減する。

あるいは、装置の非稼働状況を複数の事業所で共有することで加工機器などの資産の有効活

用を図る。

例2:(営業の効率)製造の稼働状況を営業部門において可視化することで営業担当がお客様との

交渉場面での交渉時に適切な納期判断によるスムースな応対やお客様への安心感にもつなげ

られる。

例3:(生産の品質)製造装置の稼働データの解析から製造装置の故障の予兆や、メンテナンスの

必要性の判断ができる。

例4:(製品の品質)製造・加工時の条件(気温、湿度、気圧等)データと製品の不具合率の相関

分析から製品の品質維持・管理に活用できる。

 

製造分野DX事例集

中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド」作成に先立ち行われた「中小規模製造業の製造分野におけるDXのための事例調査報告書」でヒアリングを行った14社のDX取組事例が記載されています。※4この事例集で取り上げられている株式会社ウチダ製作所(金型メーカーの共同受注、設備稼働状況と得意分野を生かして仕事を再配分)株式会社木幡計器製作所(専門人材の確保と企業連携で計器をIoT化し市場を開拓)については、本講座1回目「中小企業のDX クラウド導入、IT導入のポイント」でDX事例集として紹介した「山口県 やまぐちDX(中小企業のDX推進モデルづくり)」※5でも事例紹介が行われています。

注釈

※1 https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/mfg-dx-riyou.html

※2 https://www.ipa.go.jp/files/000093470.pdf

※3 https://www.ipa.go.jp/files/000093471.pdf

※4 https://www.ipa.go.jp/files/000087633.pdf

※5 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a16300/keieisienn/dxtebiki.html

 

 

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