カブクコネクト

コストダウンに繋がる調達のポイント

弊社では、「初めの見積りから〇%コストダウンしたい」「超特急でお願いしたい」「3Dモデルしかないけど加工をお願いしたい」「表面処理までお願いしたい」「組立までしてから納品してもらいたい」など、日々お客様からの多種多様なご相談をいただいております。

様々な声にお応えする中で得た調達のポイントを、今回は主に切削品(マシニング、フライス等のいわゆる角物)をベースにご紹介いたします。

はじめに:加工品見積の考え方

加工品見積金額は、材料+加工費(時間Xチャージ)+管理費(検査費用等)その他(送料、利益)等で計算する場合が多いです。(※厳密には減価償却費用、工具費等も含まれますが割愛しています。)

設計仕様上のスペックを満たしつつ、以下の3点を守ることが調達コストを下げることにつながっています。

・材料選択(材料費が安い、加工しやすい材料を選定する)

・加工時間が短くなる形状にする

・加工メーカー適材適所(得手不得手)を加味しての依頼

今回はこちらの図面を例に、それぞれのポイントを見てみましょう。

ポイント① 材料費

・材料の価格

材料選択を行う上で欠かせないのが、まずは材料そのものの価格です。例の図面の外形サイズで大まかに試算を行うと、鉄(SS400,S50C)¥800 <アルミ(A5052) ¥1,280 <ステンレス(SUS304)¥2,750 となり、同じサイズでもこれだけ価格が異なります。(※価格は参考価格です)

・加工のしやすさ

次に、材料が加工をしやすいものかどうかも加味しておく必要があります。加工しやすい材料を用いると、加工速度を上げられる、工具寿命が延ばせる、等、一般的には加工費用の低減に繋がります。

(株式会社GENKEI「GENKEI VALUT」 見積機能を使用)

先ほど試算した材料を用いて「機械加工」の欄を見てみると、加工時間が短い順にアルミ(A5052)<鉄(S50C)<ステンレス(SUS304)となります。

・材料の特徴

また、各材質は次のように様々な特徴を持っており、この特徴を踏まえた上で、仕様を満たしつつ価格をなるべく下げることができるか検討していきます。

S50C・・安価、錆びやすい、熱処理が可能(硬度、強度が上げられる)

A5052・・軽い、加工しやすい、熱処理は不可、強度は鉄と比べると低め

SUS304・・錆びにくい

例えば、安価な材料を選択しつつ、性能を表面処理によってカバーすることもできます。

鉄にメッキを施して防錆性能を向上させるケースを考えてみましょう。

■SUSで製造の場合

  →材料費2,570円+加工費10,415円=合計12,985円

■鉄+無電解ニッケルメッキの場合

  →材料費800円+加工費10,276円+表面処理225円=合計11,301円

となり、1,684円のコストダウンが可能です。

ポイント② 加工費

・加工費

加工費を算出するには、以下のような内訳ごとに時間単位でのチャージを算出しておき、加工時間と掛け合わせます。

内訳

・プログラム作成費用

・段取り

・機械加工

(例の図面の場合は切削、ワイヤーカット、研磨)

・バリ取り、手修正 等

 

 

 

 

 

・数量

次に数量と価格の関係性です。同じものを1個製造するときも10個製造するときもプログラム作成費用、初期段取り費用はかわりません。そのため、できるだけ数量をまとめて依頼するとプログラム作成費用、初期段取り費用を割る製品が増え、一般的に加工費を下げられます。

・形状

形状によって、工法の向き不向きがあるため、適切な工法を選択するとコストダウンに繋がります。

例えば左のような形状を製造する場合、切削では切削量が多いので加工時間が長く加工費が高くなり、材料の使用量も多いので材料費も増加します。この場合は板金を選択するのが最適です。板材料+レーザー費用+曲げ加工により、切削より安価に仕上げることができます。

 

その他、形状により価格が高くなる例として、ピッチ間公差や幾何公差が厳しい場合が挙げられます。これは初期段取りに時間がかかることや、追加工や表面処理・検査費用が追加となるためです。仕様を満たす適切な公差を設定する他、6F材など精度の高い材料を用いることで解決することができます。

ポイント③ 依頼先の選定

3つ目のポイントとして重要なのが依頼先です。

依頼先に海外工場を選定することで、人件費が安価なため加工費の時間チャージが低くなりますが、以下のデメリットが考えられます。

・材料調達に時間がかかる場合がある

・日本への輸送に日数がかかる

・海外からの輸送費がかかる

輸入点数、数量が増えれば1製品当たりの輸送費用が下がりますので海外製を選択する場合点数、納期、難易度、総重量を加味してメリットがでるかを検討する必要があります。

 

例の図面をもとに日本製造時、海外製造時のコストを計算すると、以下のようになります。

SS400 1個当たり0.4kg

■1個製造時

日本製造時 1個@10,000円(合計10,000円)

海外製造時 1個@7,000千円+輸送費8,000円(合計15,000円)

輸送費が影響して合計金額は日本製造時が安価になります

 

■50個製造時

日本製造時 50個@6,000円(合計300,000円)

海外製造時 50個@4,500千円+輸送費32,000円(合計257,000円)

数量が増えると海外品が総額で安価になる場合があります

*金額は参考価格です

まとめ

コストダウンに繋げるためには、以下の点が重要です。

・目的を満たし、安価な材料、表面処理の仕様を検討する

・加工費を削減するため時間をできるだけ短くできる仕様、工法を検討する

・最適な依頼先(海外を含む)を選定し、発注数量、点数をできるだけまとめる

各ポイントを見返し、自社の調達で取り入れることができそうなところからぜひ取り組んでいただけると幸いです。