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【薄膜・蒸着】薄膜とは

薄膜は、人工的に形成される薄い膜のことを指します。一方で蒸着は、薄膜を形成するための手段の一つとして知られています。

薄膜の形成方法 や蒸着の原理について、わかりやすく説明します。

 

薄膜・蒸着とは?

「薄膜」と「蒸着」は混同して用いられるケースがありますが、両者の意味合いは異なっています。

薄膜は薄い膜のことを指し、蒸着は薄膜を形成するための手段です。そのため2つの用語について、それぞれ分けて説明します。

 

薄膜とは

薄膜とは、日本学術振興会薄膜第131委員会が定める定義によると、人工的に形成された厚さ1µm以下の膜のことです。一般的に厚さが1µmを超える膜は、厚膜と呼ばれます。

薄膜は、下記の用途に使用されることが特徴です。

 半導体などのエレクトロニクス分野
 光を透過・反射するための光学分野
 表面の硬化・潤滑に使用する機械分野
 耐湿性や耐食性を向上する化学分野

薄膜は主にエレクトロニクス分野で使用され、半導体やコンデンサー、圧電体、電極など様々な用途があります。

蒸着とは

蒸着とは、蒸着材料を真空中で蒸発させる方法で、原子または分子の状態に分解し、下地材料に付着させる技術です。

薄膜を形成するために使用されることが多く、不純物が少ない膜の形成が可能です。真空中で実施される蒸着は「真空蒸着」と呼ばれています。

薄膜の形成方法

薄膜の形成方法は 、大きく3種類に分類されます。
 真空蒸着
 気相成長
 スパッタ

それぞれの成膜メカニズムと、特徴について説明します。

真空蒸着

真空蒸着は、真空中で加熱した蒸着材料を基板に付着させて、薄膜を形成する方法です。膜の密着性向上や不純物の混入防止のために、真空中で蒸着します。

まず蒸着材料を高温に加熱し、固体から蒸気へ変化させます。主な加熱方法は、加熱体を使用する「抵抗加熱型蒸着法」や、電子ビームで加熱する「電子ビーム蒸着法」が一般的です。

加熱の際に発生した蒸気は、真空槽へ放出されます。

次に蒸気は、比較的低い温度に保たれた真空槽で冷やされるため、再び固体へと変化することが特徴です。

このように真空蒸着では、蒸気が固体へ凝固する現象を利用して薄膜を形成します。真空中で成膜するため、不純物の混入はありません。

したがって真空蒸着を利用すると、純度の高い薄膜が得られます。

真空蒸着の特徴は、次の4点です。
 形成される薄膜は均一である
 不純物を含まない純粋な薄膜が得られる
 大面積の成膜が可能
 成膜の工程プロセスが単純であり、制御しやすい

気相成長

気相成長では、蒸着材料を気体の状態で供給し、ガスの流れを利用して成膜表面まで運びます。このとき気相反応によって成膜の種となる核を生成し、表面での化学反応で成膜できます。

得られる薄膜は原料の種類やガス流量、ガス圧力などの制御により調整可能です。

代表的な気相成長は、次の3つがあります。
 熱CVD(化学的気相成長法)
 プラズマCVD
 MO(有機金属)CVD

熱CVDは、原料の蒸着材料を熱によって分解する方法です。金属薄膜を形成する場合、温度500~700℃への昇温が必要です。

プラズマCVDは、原料をプラズマで分解します。ただし薄膜を均一に形成しにくく、大面積の用途には適用しにくいため、面積が小さい場合に利用すると良いでしょう。

MOCVDは、原料ガスに有機金属化合物を使用する方法です。

気相成長は、下記のように様々な特徴があります。
 欠陥が少なく高純度の成膜が可能
 欠陥が少なく高性能な薄膜が得られる
 原料ガスを調整し、様々な膜が得られる
 下地材料に合わせて任意箇所に成膜可能

スパッタ

スパッタは、加速したイオン粒子や中性原子をターゲット表面に照射し、原子や分子を衝突させて成膜する方法です。

具体的には、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、ターゲット材料に電圧をかけて不活性ガスをイオン化します。

このイオン粒子を高速でターゲットに衝突させ、表面に付着・堆積によって薄膜が得られることが特徴です。

スパッタには様々な種類があり、使用する電極や電源の違いによって「直流スパッタ」「高周波スパッタ」「イオンビームスパッタ」に分類できます。

直流スパッタの放電メカニズムは、アルゴン雰囲気下で陰極と陽極からなる電極間に、数kVの直流電圧を印加する方法です。

高周波スパッタは、高周波を印加して放電を促します。直流スパッタに比べて、ガス圧力が低くても成膜可能です。

一方でイオンビームスパッタは、イオンビームをターゲット材料に照射し、飛び出した粒子を成膜材料に堆積させる方法です。

イオンビームスパッタでは、より細かい成膜制御ができるため、自由度が高い薄膜が得られます。

スパッタの特徴は、主に次の4つです。

 緻密で欠陥の少ない薄膜が得られる
 成膜の制御がしやすい
 大面積の基板へ成膜が可能
 高温に昇温しなくても高密度の薄膜を形成できる

まとめ

蒸着とは、蒸着材料を真空中で蒸発させて原子や分子の状態に分解し、下地材料に付着させる技術です。この技術は、薄膜を形成するために使用されています。

薄膜を形成する方法には、蒸着のほかに「気相成長」や「スパッタ」があります。使用する用途に合わせて使い分けると良いでしょう。

 

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