金属の造形方式:PBF(SLM、EBM)
PBF(粉末床溶融結合)はレーザや電子ビームを熱源として、平たんに敷き詰めた金属粉末を一層ずつ溶融・固着しながら積層していく方式です。レーザを使用するタイプは「SLM(Selective Laser Melting)」、ビームを使用するタイプは「EBM(Electron Beam melting)」などと呼ばれます。
1) レーザビーム熱源方式
敷き詰められた金属粉材料にレーザビームを照射して溶融・凝固または焼結させて積層造形します。金属3Dプリントにおいて広く普及している方式です。レーザにはファイバーレーザなどが用いられ、レーザ光をガルバノミラーで制御する方式が多いです。 造形中に金属粉末が酸化するのを防ぐためにAr(アルゴン)などの不活性化ガスを造形エリアの中に充満させて酸素濃度を下げます。 レーザを複数搭載するなどして生産性の向上を図った機種もあります。
(2) 電子ビーム熱源方式
敷き詰められた金属粉材料に電子ビームを高真空中で照射し衝突させることで、運動エネルギーを熱に変換し粉末を溶融させます。プリンタの構造は上記のレーザビーム熱源方式に近いですが、電子ビーム方式は真空中で溶融凝固がなされます。 また、レーザビーム方式はレーザを照射する際の位置決めをガルバノミラーの角度を変えて行うのに対し、電子ビーム方式は、磁界によるレンズを用いて電子ビームの向きを変えるので、機械的な移動がなく高速な位置決めが可能です。 レーザビーム方式と電子ビーム方式の代表的な機種の比較
装置 | EOS M290 | Arcam EBM Q10 |
---|---|---|
熱源 | Yb-ファイバレーザ | 電子ビーム |
最大パワー | 400W | 3500W |
ビームサイズ | ~60μm | ~100μm |
走査速度 | Max 7m/s | Max 8000m/s |
予加熱温度 | RT-200℃ | 0.5~0.8Tm |
粉末サイズ | 10~50μm | 45~105μm |
PBFの造形プロセス
(1)材料供給時
材料供給部、ビルドプレートと余剰粉末を受けるボックスがあります。 材料供給部には上に移動する供給エレベータ上に金属粉末がセットされています。 供給エレベータは一度に数10ミクロンずつ上昇し、リコータは持ち上がった金属粉を掻き取り右に移動させビルドプレートに供給します。 ビルドプレートのエレベータは一回の造形厚さ分だけ低下し、そのスペースにリコータによって金属粉末が供給され、敷き詰められます。余った金属粉は余剰ボックスに落下・溜められます。この余った粉末は廃棄せず、バージン材料(新規材料)と混合して再利用されます。
(2)レーザ照射時
金属粉末表面へのレーザ照射は事前に専用のソフトウェアでSTLファイル等の3Dモデルデータをスライスして各層の照射形状が決められています。 プリンタは各層の形状データに基づき、レーザとミラーを2次元的に高速位置決めして金属粉末表面にレーザを照射、溶融、固化させます。
(3)ビルドプレートの低下と次層への材料供給
一層の照射が完了するとビルドプレートを一回の造形厚さ分だけ低下させ、空いたスペースにリコータが材料粉末供給部から次層分の金属粉末を供給します。
(4)レーザ照射
新しい層にレーザを照射します。 以降、粉末の積層とレーザの照射を繰り返します。
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