STEPとSTLについて
はじめに
3Dプリントと3Dモデルを設計するCADの領域にはさまざまな種類の3Dファイル形式があります。
皆さんが3D CADで作成したデータを取引先に共有するとき、使用している3DCADソフトの種類が異なると、
受け取り側でデータを開くことができません。
このような3DCAD独自の形式のファイルを「ネイティブファイル」と呼びます。
異なるCADソフトの間でも円滑にデータを交換することができるようにするためには
CADソフトに依存しない互換性のあるファイル形式を使用します。これを「中間ファイル」と呼びます。
中間ファイルにも複数種類ありますが、代表的なものに「STEP」と「STL」があります。
STEPファイルの特徴
STEPファイルはISO10303として知られている一般的なファイル形式であり、
名前の文字は「Standard for the Exchange of Product Data」の略です。
このファイル形式は、1980年代半ばに自動化システムと統合に関するISO技術委員会(TC 184)によって開発されました。
STEPファイルは、その名の通り異なるソフトウェアプログラム間のファイルの互換性を向上させ、
設計をより簡単に共有できるようにするために作成されました。
STEPファイルは3Dソフトウェアで設計したモデルの正確な形状を表現することができます。
STEPファイルは基本的な形状だけでなく、3Dモデルの全体を高レベルの精度で保存し、
他のプログラムやソフトウェアでも後でファイルを編集できるようにします。
![](https://www.kabuku.io/wp_module/wp-content/uploads/2021/03/stp.png)
STEPファイル
STEPファイルが中間ファイルとして標準的な位置づけを獲得できたのには、
精度と互換性という2つの主要な側面があります。
まず、STEPファイルはモデルを保存するとき、
フィーチャを通常の幾何学的図形に単純化しないことで高い寸法精度を維持します。
これにより、細部まで含めて正確に保存することができます。
エクスポートされたSTEPファイルの拡張子は.stpまたは.stepになります。
次に、STEPファイルのもう1つの重要な機能は、モデルをエクスポートした後でも、
モデルをカスタマイズおよび編集することができる点です。
STEPファイルでは、ファイル形式で本体全体が完全に保存されるため、モデルを後から再編集できます。
これにより、クロスプラットフォームの設計、コラボレーション、およびモデルの共有が容易になります。
STEPファイルのデメリットはファイル容量が大きくなる点で、
他のほとんどの3Dモデル形式よりも同じモデルを保存したときにファイルサイズが大きくなります。
また、 STEPファイルは、モデルの特定のマテリアル、テクスチャ、またはライティングの情報を保存することができません。
STLファイルの特徴
3Dモデルを表現する中間ファイルであるSTLは
三角形の集まりでモデルの形状を表現するメッシュデータです。名前のSTLは「StereoLithography」の略です。
STLファイルは、色、テクスチャ、またはその他の一般的なCADモデル属性を表現せずに、3次元モデルの表面ジオメトリのみを記述します。
多くのソフトウェアパッケージでサポートされ、3Dプリントなどに広く使用されています。
これは3Dプリンターや同様のマシンが、STLファイルのメッシュに見られるようなジオメトリの加工に優れているためです。
STLファイルはプログラムの作成が簡単なためCADでも使用され、
STEPよりもファイルサイズが小さくて済む利点がありますが、STEPファイルほど正確に形状を表現することはできません。
STLファイルにはASCII表現とバイナリ表現の2種類があり、
バイナリファイルはASCIIと比較してよりファイルサイズを小さくすることができます。
STLファイル
STLファイルはデータを保存する際にメッシュの細かさをユーザーが設定することができます。
メッシュ密度:高
メッシュ密度:中
メッシュ密度:低
STLは三角メッシュで形状を表現するため、密度が低くなると曲面の再現性が悪くなります。
メッシュ密度を高くすることで曲面に近づけることができますが、その分データのサイズが大きくなります。
STEPファイルとSTLファイルの比較
ファイル形式 | 用途 | ファイルに含む情報 |
.stp |
正確な形状の保存 |
CADモデルデータの全情報を含む |
.stl | 3Dプリンティングなどのプロトタイピング用にCADからエクスポート |
モデルのメッシュ情報 |
データの変換
STEPファイルをSTLに変換するのは簡単です。
多くのCADソフトはSTLでのエクスポート機能を有しています。
一方、STLをSTEPに変換することは可能ですが、R形状部分の曲面の再現はできません。
曲面の再現が必要な場合はリバースエンジニアリング用のソフトウェアで
メッシュデータからCADデータへの変換処理を行う必要があります。
まとめ
中間ファイルの「STEP」と「STL」をご紹介しました。
中間ファイルはCADとCADの間を繋ぐ役割をになっており、
取引先とCADで作成したモデルデータをやり取りする業務に従事している人には必要不可欠です。
是非、「STEP」と「STL」特徴をしっかり理解して業務に役立ててください。
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