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空圧回路を制するものは自動機械を制す 第一回 電磁弁とシリンダー ~基本動作~

本日より、技術士の春山先生による全2回の連載「空圧回路を制するものは自動機械を制す」を掲載いたします。第一回は電磁弁とシリンダーの基本動作についてです。

【1】エアシリンダ

エアシリンダは空気圧により動作する機械要素です。代表的なものにロッド付きエアシリンダがあり空気圧によりロッドが出たり引っ込んだりします。

ここではロッド付きエアシリンダを例にとって解説を進めます。

エアシリンダには大きく分けて二つあります。

・単動式

・複動式

 

 

 

(1)単動式エアシリンダ

エア圧を給排気するポート(入口)が一つあり、そこにエア圧をかけるとロッドが動く、エア圧を排気するとロッドが戻るシリンダ。

「エア圧でロッドを押し出す」ものを単動押出式

「エア圧でロッドを引き込む」ものを単動引込式

と言います。図にあるものは単動押し出し式です。

 

(2)複動式エアシリンダ

 

エア圧をかけるポートが二つあり、それぞれ給気排気を入れ替えることでロッドを押し出したり引き込んだりするシリンダ。

*エアシリンダの押す力、あるいは引き込む力はエア圧の大きさとそれを受ける部分の面積との積で決まります。

押し出し側と引込側とを比べると、右の図にあるように引込側の方が面積が小さくなるため注意が必要です。

 

(3)スピコン

 

エアシリンダの動作速度を調整するためにはスピコンという要素を使用します。使わなくても動きますが、スピードを調整したい場合には必要になります。

スピコンは内部で流量制御弁と逆止弁が並列で配置されています。逆止弁の向きの違いでスピコンにはメータアウト方式とメータイン方式の2つがあり、基本的にシリンダとスピコンの種類の組合せは決まっています。

 先にシリンダとスピコンとの組み合わせを書いておきます。

◆単動式シリンダ × メータイン方式スピコン

◆複動式シリンダ × メータアウト方式スピコン

 

何故この組合せか?スピコンの構造から解説していきます

 

【メータアウト方式】

シリンダからの排気量を制御してスピードを調整するタイプです。

メータアウト方式では排気側で逆止弁が働き、エアは流量制御弁のみを通過します。

このため排気側では流量が制御されます。(右上図の赤線)

給気側では逆止弁は働かずにエア圧がシリンダに流入します。

このため給気側では流量が制御されません。(右上図の青線)

 

【メータイン方式】

シリンダからの給気量を制御してスピードを調整するタイプです。

メータイン方式では給気側で逆止弁が働き、エアは流量制御弁のみを通過します。

このため給気側では流量が制御されます。(右上図の青線)

排気側では逆止弁は働かずにエア圧がシリンダに流入します。

このため排気側では流量が制御されません。(右上図の赤線)

 

【シリンダとスピコン組合せ】

まずは単動式のシリンダを考えます。

単動押出式にメータアウトを使った場合、

 排気=引込時にスピードをコントロールすることになります。

 給気=押出時にスピードをコントロールすることはできません。

単動押出式では通常、押出で使用します。よって押出側のスピードをコントロールするためにメータイン方式を選択します。

同様に、単動引込式では引込側のスピードをコントロールするためにメータイン方式を選択します。

次に複動式のシリンダを考えます。

複動式にメータインを使った場合、排気側が急激に圧が抜けることになります。押出側と引込側の圧力が急激に差ができてしまうためスピードは不安定になります。

よって複動式のシリンダではメータアウト方式を選択します。

 

【2】電磁弁

電磁弁は電気信号を受けて弁を開閉する機器です。電気信号はPLCなどの制御機器からの指令として受けます。

さてその電磁弁。これも様々な種類がありますので順にみていきます。

 

(1)駆動方式

①直動型

弁を電力のみで開閉させるタイプになります。その中でも2種類が存在します。

◆シングルソレノイド

電磁弁が一つ付いていて、電気を流すと弁が開き、1番(Pressure)ポートから2番(Actuator)ポートにエアが流れます。

電気を遮断するとばね力で弁が閉じ、1番(Pressure)ポートから2番(Actuator)ポートが遮断されます。

◆ダブルソレノイド

電磁弁が二つ付いていて、一方に電気を流すと弁が開きます(もしくは閉じる)。

電気を切り替えて、もう一方に電気を流すと弁が閉じます(もしくは開く)。

ダブルソレノイドでは電気信号が両方オフになると直前の位置を保持します。

逆に両方をオンにしてしまうと故障の原因になってしまうので要注意です。

 

②パイロット式

弁(主弁)をエアで開閉させるタイプ。

主弁を開閉するためのエア供給を電磁弁で制御します。これも2種類存在します。

◆内部パイロット式

電磁弁の1次エア供給をメインの流路から分岐させて接続するタイプ。

◆外部パイロット式

電磁弁の1次エア供給を別系統で接続するタイプ。

 

(2)方向性 ポート数

①2ポート

ポートつまり配管接続口が2つある(PとA)タイプです。

◆1番ポート P(Pressure)

エア源からの配管を繋ぎます。いわゆる一次側圧力。

◆2番ポート A(Actuator)

電磁弁がonの時、エアが供給されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

*NC➔Normal Close 通常、閉の意味。

②3ポート

ポートつまり配管接続口が3つある(P、A、B)タイプです。

◆1番ポート P(Pressure)

エア源からの配管を繋ぎます。いわゆる一次側圧力。

◆2番ポート A(Actuator)

電磁弁がonの時、エアが供給されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

◆3番ポート R(Return )

排気ポート

 

 

③4ポート

ポートつまり配管接続口が3つある(P、A、B、R)タイプです。

◆1番ポート P(Pressure)

エア源からの配管を繋ぎます。いわゆる一次側圧力。

◆2番ポート B

電磁弁がonのとき3番と繋がり排気されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

◆3番ポート R(Return )

排気ポート

◆4番ポート A(Actuator)

電磁弁がonのとき1番と繋がりエア供給されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

④5ポート

ポートつまり配管接続口が5つある(P、A、B、R、R)タイプです。

動作は4ポートと同じです。4ポートと比べて製造が容易なため、5ポートの方が一般的です。

◆1番ポート P(Pressure)

エア源からの配管を繋ぎます。いわゆる一次側圧力。

◆2番ポート B 

電磁弁がonのとき3番と繋がり排気されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

◆3番ポート R(Return )

排気ポート

◆4番ポート A(Actuator)

電磁弁がonのとき1番と繋がりエア供給されます。アクチュエータへ配管を繋ぎます。

◆5番ポート R(Return )

排気ポート

(3)ポジション

ここまでの説明はすべて2位置タイプ、つまりonーoffの2位置があるものでした。

3位置は文字通りonー中間ーoffの3位置があります。

ダブルソレノイドタイプでは片側通電でon状態、反対側通電でoff状態を作ります。

3位置タイプではこれにさらに、両方を電気遮断で中間位置を作り出します。

3位置タイプは内部構造(中間位置の構造)で3種類に分かれます。

◆3位置 クローズドセンタ

中間位置でアクチュエータへのエアの給排気が停止されます。

このためアクチュエータは一時停止します。ロッド付きの場合は受圧面積のバランスで徐々に動作します。

また、長時間放置すると徐々に圧力が抜けて保持力が弱くなっていきます。

◆3位置 プレッシャセンタ

アクチュエータ受圧面積のバランスで徐々に動作もしくは一時停止します。

ロッド付きシリンダでは押出側の受圧面積が引込側に比べて大きいため押出側で保持します。

あるいはロッドレスなど両側の受圧面積が同一の場合は一時停止します。

圧力をかけ続けるため、保持力が低下することがありません。

◆エキゾーストセンタ

排気が解放されます。

これによりアクチュエータがフリーになり、手動などの外力で動かせるようになります。

非常時の安全対策などで、圧力を抜きたいときに使用します。

 

【3】シリンダと電磁弁の組合せ

単動および複動のシリンダを動作させる場合の2ポジションの電磁弁との組み合わせは次の通りです。

◆単動シリンダ × 3ポート電磁弁

◆複動シリンダ × 5ポート電磁弁

単動シリンダに2ポートの電磁弁を使ってしまうと、2ポートは開・閉のみのため圧力を抜くことができずシリンダを往復動作させることができません。3ポートを使用する必要があります。

複動を使用する場合は4ポートあるいは5ポートになりますが、流通性が良いのは5ポートのため、5ポートを選択することが多くなります。

 

 

 

 本連載を担当させていただきます、春山周夏(はるやましゅうか)と申します。私は2018年3月に独立開業、春山技術士CE事務所を開所しました。会社員時代は主に生産技術を担当し工場内の様々な設備の開発、設計、更新、立上、解体撤去を経験しました。そこで私はたくさんの失敗をしました。私が失敗から学んだ設備開発の超重要ポイントと具体的な設計時の考え方を本連載で共有させていただきます。
春山技術士CE事務所 https://www.haruyama-ce.com/

 

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