鉄鋼材料の熱処理 – 焼きなましと焼きならしとは

技術基礎

 

金属材料の生産・加工においては、機械特性や加工性の向上などを目的として、さまざまな熱処理が行われています。

今回は、代表的な熱処理でもある「焼きなまし」「焼きならし」の特徴について解説します。

ここでの熱処理とは、鋼・ステンレス・合金鋼などの鉄鋼材料の熱処理となります。他のアルミニウム、マグネシウム合金などの熱処理は同じように温度制御によって、材料に合わせた熱処理が存在します。

 

鉄鋼材料における熱処理について

鉄鋼メーカーで生産される鉄鋼材料は、連続鋳造、鍛造、熱間圧延、冷間圧延といった工程の中で、焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、焼きならしといった熱処理が行われます。

このような複雑な工程が必要な理由は、JISで規定された目的の材質に調整する必要があるからです。

例えば、建築、船舶、自動車などの構造部材となる一般構造用圧延鋼材 SS400は、SSがSteel Structure の頭文字です。後に続く数字は、材料の強度を示す引張強度が400~510MPaとJISで規定されています。

形状、厚さ、材料強度などを規定された材質とするために、化学組成、圧延、熱処理、冷却といったことを緻密に制御することで目的の材質が得られます。

冷間圧延などの加工を行ったものは、加工によるひずみや不純物・介在物といった不均一な金属組織となっています。そのため、熱処理によって金属組織を均一化します。

また化学組成が同じにも関わらず、板厚が異なる鋼材で強度は異なります。これは厚さを薄く調整する分、冷却速度(冷却しやすさ)に差が生じ、薄い鋼板であるほど結晶粒が細かく強度が高くなる傾向があるからです。

その逆は、厚い鋼板は冷却が遅いために結晶粒が粗大になっているため、強度が落ちたり、低い温度で材料がもろくなる低温ぜい性を示しやすくなります。

 

焼きなましとは

一般的に言われる焼きなましは、冷間加工や切削加工前に加熱して鋼材を軟化させることで、曲がりや反りを防ぐために行う熱処理方法です。

JIS  B6905によれば、焼きなましとは「金属の機械的性質を変化させ、残留応力の除去、硬さの低減、延性の向上、被削性の向上冷間加工性の改善、結晶組織の調整、ガスその他不純物の放出、化学組成の均一性などを行う処理」とされています。

焼きなましは、「焼鈍」(しょうどん)とも呼ばれ、英語では「anealing」(アニーリング)、中国語では「退火」となります。ちなみにJISの加工記号では「HA」と表記されます。

焼きなましを行うと鋼材を軟化(やわらかく)して加工しやすくなることがメリットになります。適切な温度と保持時間によって鋼材の組織を均一化もしくは改質することが可能です。

 

焼きなましを行う理由

金属を溶かして凝固(冷やして固めること)した金属は、成分や不純物が偏析したり、介在物(鉄鋼製品であれば炭化物など)があったり、結晶の大きさが不均一であったりと本来持つ機械的特性を発揮できない状態です。また、炭素鋼や合金鋼などは、添加する金属元素が偏析し、偏析した箇所の機械的特性や腐食されやすさが異なります。偏析した金属元素を高温で拡散(移動)させることによって、材料を均一化させることが可能です。

このような金属組織の不均一さを改善するために、焼きなましなどの熱処理が必要となります。

特に焼きなましにおいては、金属を高温で熱し、軟化させることで加工させやすくし、加工中に発生する曲がりや反りといった加工ムラを防ぐために行われます。

 

焼きなましの種類

鉄鋼材料の焼きなましの種類は「完全焼きなまし」「軟化焼きなまし」「応力除去焼なまし」「球状焼きなまし」があり、それぞれの目的によって高温での熱処理と冷却工程があります。

 

完全焼なまし(JIS 加工記号: HAF)

鉄鋼製品の結晶組織を調整し、軟化する処理。

 

軟化焼なまし(JIS 加工記号: HASF)

金属の硬さを低下させ、後の塑性加工、切削加工などを容易にする処理。

 

応力除去焼なまし(JIS 加工記号: HAR)

加工ひずみ又は残留応力を除去するために行う処理。

 

球状化焼なまし(JIS 加工記号: HAS)

鉄鋼製品の機械加工性及び冷間加工性を改善し、又はじん性を向上するための処理。

 

焼きならしとは

焼きならしは、鉄鋼製品の前加工の影響を除去し、焼きなましされたものよりも金属組織の結晶を微細化して、機械的性質を改善することが最大のメリットです。

鋳造・鍛造・圧延といった工程を経た鋼材は、材料内部に多くの歪が発生しています。このまま加工すると強度が不十分です。この残留応力や歪を取り除くために組織を焼きならしによって均一化させます。

焼きならしは、「焼準」(しょうじゅん)とも呼ばれ、英語では「normalising」(ノーマライジング)、中国語では「正火」となります。ちなみにJISの加工記号では「HNR」と記載されます。

英語でnormalizingと呼ばれるように、正常な金属組織にするという意味で加工によって生じたひずみ・残留応力の除去に加え、結晶粒を微細化することによって、引張強度・延性を改善し、目的の材料に調質されます。

 

焼きならしの方法と強度が向上する理由

焼きならしは、鉄-炭素の状態図である共析鋼となる範囲で変態点(A1)よりも高い温度で加熱し、一定時間保持後に空冷(空気に触れさせて冷却)されます。

変態点以上の温度に加熱された共析鋼は、組織がオーステナイトとよばれる組織に変化し、結晶粒は粗大化します(加工した組織の回復と再結晶化)。

一定時間保持後に冷却すると、変態点以下の温度で組織は、フェライトとパーライトと呼ばれれる組織に変化し、これは2つの異なる組織がオーステナイトの組織から変化するため、微細な組織となります。

これらの過程で、組織の均一化と微細化によって材料の引張強度や延性が向上します。