【部品】機械設計の基礎:機械要素 カムとは
私たちは普段意識しませんが、カムは私たちの身の回りにある多くの機械に不可欠な部品です。例えば、自動車のエンジン、ミシン、自動販売機など、様々な装置の動きを司っています。
カムとは?
カムは、回転運動や直線運動を、特定の往復運動や断続的な運動に変換するための機械要素です。カム(原動節)の輪郭形状によって、フォロワー(従動節)と呼ばれる別の部品が決められた動きをするのが特徴です。簡単に言えば、カムの形がフォロワーの動きを決める「設計図」のような役割を果たします。
カムを構成する要素
カム機構は主に以下の3つの要素から成り立っています。
カム本体(原動節): 回転または直線運動をする部品で、その外形がフォロワーの動きを決定します。
フォロワー(従動節): カムの動きに合わせて往復運動をする部品です。ローラーフォロワー、フラットフォロワー、ナイフエッジフォロワーなど、カムの形状や必要な動きによって様々なタイプがあります。
フレーム: カムとフォロワーを支え、適切な位置に保持する固定部分です。
カムの種類
カムはその形状やフォロワーの動きによって、いくつかの種類に分類されます。
1. 円板カム(ディスクカム)
最も一般的で広く使用されているカムです。円板状のカムが回転することで、その外周に沿ってフォロワーが上下運動をします。
特徴: 設計が比較的容易で、様々な往復運動パターンを作り出すことができます。自動車のエンジンのバルブ開閉機構などに用いられています。
用途例: エンジン、印刷機、自動組立機
2. 溝カム(グローブカム、円筒カム)
円筒の側面に溝が彫られており、その溝にフォロワーが沿って動くことで、フォロワーに直線的な往復運動や複雑な動きをさせます。
特徴: フォロワーを確実に拘束できるため、高速回転や精密な動きが求められる場合に適しています。
用途例: 繊維機械、自動倉庫の搬送機構、映写機
3. 端面カム(フェースカム)
円板の端面に溝や起伏があり、これによってフォロワーが軸方向に動きます。
特徴: 省スペースでの設計が可能で、比較的小型の装置によく用いられます。
用途例: 計測機器、一部の自動販売機
4. 三次元カム
文字通り三次元的な複雑な形状をしており、フォロワーを空間的に動かすことができます。非常に複雑な動きや多軸制御が必要な場合に用いられます。
特徴: 高度な設計と加工技術が必要ですが、非常に自由度の高い動きを実現できます。
用途例: ロボットアームの関節、特殊な自動機
カムの役割
カムの主な役割は、入力された回転運動を、必要なタイミングとパターンでフォロワーの特定の往復運動や断続的な運動に変換することです。これにより、機械が意図した動作を正確に行うことができます。
バルブの開閉: 自動車のエンジンでは、カムが吸気バルブと排気バルブを適切なタイミングで開閉し、エンジンの燃焼サイクルを制御します。
送りの動作: 印刷機や包装機では、カムが紙や製品を正確な位置に送る役割を担います。
部品の供給: 自動組立機では、カムが部品を所定の位置に供給する動作を行います。
まとめ
カムは、機械に生命を吹き込み、決められた動作を正確に実行させるための重要な機械要素です。その多様な形状と応用範囲は、現代の様々な産業を支える基盤となっています。カムの仕組みを理解することで、身近な機械がどのように動いているのか、より深く知ることができるでしょう。