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【連載】DXを行うための 組織や必要なこと

この連載では、株式会社ロードフロンティアの代表取締役 並木 将央 様に、全3回にわたってDXについて解説いただきます。

本日は「DXを行うのに知っておきたい技術」をテーマに、具体的なツール等についてご説明いただきます。

 

株式会社ロードフロンティア
代表取締役 並木 将央 

成長時代と成熟時代の時代格差や環境変化を取り入れた社会的イノベーションを背景とした事業変革理論を展開し、The Japan Timesの「次世代を担う100人CEO アジア2014」に選ばれた新進のコンサルタント。経営と技術の両面の知識を持ちDXに精通、また現在の世情や人間観をも背景とした多様なマーケティングと経営手法や理論の活用方法で、企業や各種大学での講演・講義を行うため、幅広い分野での経営・ビジネスのコンサルティングを実施している。

 

DMを行うための組織はどうあるべきでしょうか?必要なこととは?今回はDMを行える組織となるために必要な考え方をお伝えします。

なぜDXに組織戦略が欠かせないのか

DXとは、顧客や市場だけではなく、組織の変革も欠かせません。社員を置いてけぼりにしたまま、IT化を進めても使われないシステムを作るだけに過ぎません。また、システムを使ってもらえたとしても「ただ仕事をロボットに奪われた人」を増産するだけになりかねません。組織イノベーションあってこそ、DXは効果を発揮します。DXを実行するにあたって、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかを考えた経営戦略が不可欠です。社員に会社のビジョンが浸透していないと、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革が行えません。DXを実現するための取り組みは下記の通りです。前回の動画でもお伝えしましたが、DXは顧客が楽しくなることが重要です。顧客を楽しませるためには、まずは社員が楽しくなければなりません。今回は、組織をどうしていくのかをお伝えします。

現在の組織戦略

ワーク・ライフ・バランスの誤認

組織戦略として働き方改革を行った企業は多いと思います。しかし、福利厚生を充実させたり残業時間を減らせたりしても働き方改革にはなりません。ノー残業デーの悪影響として家に仕事を持ち帰ったりカフェで仕事をしていたりするニュースを皆さんも御覧になったと思います。もっと本質的なところから変えていかなければ、働き方改革にはなりませんし、組織を変えていくことはできません。働き方改革を試みた企業が狙っていたのは、ワーク・ライフ・バランスの向上でしょう。そもそもワーク・ライフ・バランスとは仕事と生活の調和のことです。休みを与えていれば良いというわけではありません。憲章は下記の通りです。

では、ここで質問です。仕事と生活のどちらが大事だと言っていますか?国語の問題だと思ってもう一度、読んでみてください。この憲章は何のために策定されていますか?「そのような社会の実現に向けて」です。

そのような社会とは、持続可能な社会です。では、「持続可能な社会の実現にも資することとなる。」の主語は何でしょう?「(誰もが意欲と能力を発揮して)労働市場に参加することは、」です。つまり、大事だと言っているのは、仕事です。決して時間や余暇を与えましょうというものではありません。誰もが意欲と能力を発揮するために必要なものが、前述されているのです。

「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。」

・誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす
・個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができる

ここでは、残業時間を抑制することではなく、働くというのがどういう状態なのかを説いているのです。ワーク・ライフ・バランスは、決して仕事と生活の時間について述べているわけではないのです。

いい暮らしをすることが幸せで、そのために仕事をする、という価値観が定着していた成長社会では、ワークでお金を増やすことで、天秤が釣り合うように、その分ライフの豊かさも増えていきました。成熟社会でのワークとライフのバランスは、やりがいや充実感という水でコップが満たされ、そこから溢れた水がライフを潤します。その水を自己啓発・自己学習として、またワークに注いでいくのです。働き方改革とは、ワークのコップを水で満たすことを指すのです。

例えば、あと1時間あれば今やっている仕事が片付き、すっきりしておいしいお酒が飲めるのに、残業時間カットで強制退社させられ、セキュリティ上、会社の外にも仕事を持ち出せず、明日に持ち越さなければならないとなったら、その日のお酒はおいしいものになるでしょうか。

本来、人間はここまでがワーク、ここからがライフとはっきり気持ちを切り替えられるものではありません。仕事でミスをすれば家に帰っても落ち込み、良い仕事ができたらおいしいお酒が飲めるのです。そうしたやりがいを無視して時間で区切ってはいけません。

企業と顧客と社員の関係性の変化

成長社会と成熟社会では企業と顧客と社員の関係性が変わってきています。年功序列・終身雇用・組合の3種の神器が揃っていた成長社会では、社員は企業に忠誠心を持ち、与えられた規則とマニュアルを守ります。そして、顧客にはマニュアルに沿って対応します。顧客は社員の対応がよければ、企業に「良い教育をしている」と信頼します。顧客ロイヤルティは企業につきます。

しかし、転職やリストラが珍しくない成熟社会では、企業は3種の神器を与えることができません。与えることができたとしても、社員に望まれていません。企業が社員に与えるべきなのは、社員が自己実現できる環境です。社員のビジョンにマッチした仕事と権限移譲を行い、明るくイキイキと働き、心身の健康も経済的豊かさも担保することが大事です。

社員は企業に忠誠心ではなく、信頼感や幸福感をベースに「この会社で働きたい」という気持ちから属します。どこも人手不足なので働き口はたくさんあるため、社員は1つの会社に固執する必要もないので、面倒くさい顧客に我慢しようとは思いません。反対に幸せに満ちている社員は、顧客に良い対応を取れます。顧客ロイヤルティは社員につきます。

例えば、美容室でお世話になっているスタイリストさんが独立するとします。家からの距離がさほど変わらないのであれば、スタイリストさんがいなくなった店舗かスタイリストさんが新しく創った店舗かどちらに行きますか?多くの人はスタイリストさんがいる、新しく創った店舗へ行くといいます。なぜなら、顧客ロイヤルティがお店ではなく、スタイリストさんについているからです。

顧客は企業へは満足度・LTV・マインドシェアといった観点から評価をしてくれます。満足度は説明するまでもないと思いますが、美容室だと「このお店は居心地がいい」「スタッフの挨拶が気持ちいい」「技術がうまい」などが影響して判断されます。

LTVはライフ・タイム・バリューの略で、日本語で言うと、顧客生涯価値です。一人の顧客が生涯でどのくらい購入してくれるかを求めるものです。顧客1人ひとりの顧客生涯価値を計算するのは難しいので、顧客全体のデータで計算するのが現実的です。

LTV=年間取引額×収益率×取引継続年数で求めます。LTVが高いと「このお店が扱う製品は良いはずだから、新しいトリートメントも試してみよう」などと、信用して新商品も頼んでもらえます。続いて、マインドシェアは対象者の心の中にどの程度地位を抱いているかを示したものです。マインドシェアが高ければ高いほど「あなたなら」「あなたしか」と言ってもらえる可能性が上がります。美容室の例だと「そろそろイメチェンしたいな。あの店でカラーしてもらおう」と、すぐに思い出してもらえるお店がマインドシェアの高い店です。

まとめ

顧客を楽しませるためには、まずは社員が楽しくなければなりません。社員が楽しく仕事できるかどうかは企業の在り方次第です。社員のビジョンを応援し自己実現の場となるようにすることが重要です。社員一人ひとりのビジョンを知っていますか?