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RoHS指令と六価クロムと三価クロム【後編】

前回の記事につづいて今回は、三価クロムと六価クロムの違いについて詳しく解説します。

 

前回記事:RoHS指令と六価クロムと三価クロム

 

クロムについて

第6族元素(クロム族元素)のひとつであるクロム(元素記号「Cr」、元素番号24)は大気中ですぐに酸素と結び付いて、薄い酸化被膜(不動態皮膜)を形成します。

この不動態皮膜は耐食性が高く、鮮やかな光沢を形成することから多くはめっきに利用されています。

鋼材としてはクロムを10.5%以上含んでいるステンレス鋼も同様にクロムが不動態皮膜を形成し、たとえ被膜に傷がついてもまたすぐに形成され、ステンレスを錆から守る働きをしています。

また、クロム単体に有害性は確認されておらず、自然界の土中にクロム単体または三価クロムの形で広く存在しています。

さらに、必要な量は微量ではありますが、クロムは人間が活動するために必要な代謝に関わる必須栄養素のうちのひとつでもあります。栄養素として体内に取り入れる必要があるクロムは三価クロムですが、多くの食品に含まれているため、通常の食生活であれば欠乏症になる恐れもありません。

クロムと聞くとちょっと危険かな?というイメージがありますが実は体に必須な栄養素でもあったのですね。

 

六価クロムと三価クロム

六価クロムと三価クロムは、それぞれをクロムの化合物を価数で分類させたとき、Cr(Ⅵ) 化合物が「六価クロム」、 Cr(Ⅲ) 化合物が「三価クロム」と呼ばれています。

前述の通り自然界の土中に広く存在している三価クロムに対して、六価クロムはクロム鉱中に存在するだけでほとんど存在していません。

六価クロムは酸化剤などで三価クロムを人工的に高温で燃焼させることで生成されます。

また、生成された六価クロムは、無害の三価クロムと違いとても毒性が強く、「鼻中隔穿孔」という鼻の左右を隔てる鼻中隔に穴が空く症状や、肺がん、気道障害や皮膚炎など、人体に悪影響を及ぼします。

そのため、六価クロムを廃棄する際は無毒の形態にする必要があり、還元剤と反応させることによって三価クロムに変えて廃棄します。

 

六価クロムは主に「めっき」として多く使われていたものの、RoHS指令発令後は、毒性のある六価クロムから無毒の三価クロムの使用へシフトされてきています。

しかし、六価クロムもまだ使用されているのが現状です。

日本ではRoHS指令が適用されていないこともあり、ホームセンターなどでよく見かける「ユニクロ」めっき処理がされた製品などに、六価クロムが含まれていています。

六価クロムは、めっき後は金属クロムとなるので、しっかりと洗浄して使用する分には、毒性の問題はありません。

六価クロムを使用してめっきを行っている理由としては、容易にめっき作業を行うことができ、安価で扱いやすい点が挙げられます。反対に、三価クロムを使用しためっきは、処理までの準備や液の管理に時間がかかるため容易に作業が行えない分高価になるため、今まではあまり使用されていませんでした。

現在は、めっきを行う際の処理条件を調整したり、薬剤の開発などで、三価クロムのめっきを使用しやすい環境が整っています。

他にも、半世紀にわたり主流だった、亜鉛めっきの後処理に使用される六価クロメートの処理も、代替として三価クロメートが開発され普及しています。

加えて、六価クロム、三価クロムなどクロムを全く含まない、ノンクロム化成皮膜処理といわれる六価クロムの規制に対応したものもあります。

ノンクロム化成皮膜処理は、クロメート処理の代替表面処理としてこれからの環境規制対策に幅広い用途が期待されています。

 

終わりに

同じクロムの化合物でも、六価と三価では酸化数が違うだけで全く別の性質を持っていることがお分かりいただけたかと思います。

人体への影響も少なく地球環境にも優しい材料や加工法の開発、利用推進の取り組みは、今後ますます活発になることが予想されます。

サステナビリティを向上させながらモノづくりを進めていく力が、これからの社会に必要とされるのではないでしょうか。

 

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