カブクコネクト

【部品】機械設計の基礎:機械要素 ねじの締め付けトルク

ねじは、現代のあらゆる機械や構造物において、部品を結合するための最も基本的な要素の一つです。しかし、ただ単にねじを締めれば良いというわけではありません。適切な「締め付けトルク」で締め付けることが、そのねじ結合の信頼性、安全性、そして耐久性を決定づけます。

締め付けトルクとは?

締め付けトルクとは、ねじを締め付ける際に、ねじ山とねじ山、およびねじの座面と被締結部材との間で発生する回転方向の力(モーメント)の総和のことです。。トルクの単位は通常、「ニュートンメートル(N・m)」や「キログラム重メートル(kgf・m)」で表されます。

このトルクが大きすぎるとねじや部品が破損し、小さすぎるとねじが緩んでしまうリスクがあります。

なぜ締め付けトルクが重要なのか?

ねじを適切なトルクで締め付けることには、以下のような重要な理由があります。

1. 軸力(引張り力)の確保

ねじを締め付けると、締め付けトルクが加わることで、ねじ山のリードと座面を介して被締結部材が圧縮され、その反力としてボルトに「軸力」と呼ばれる引張り荷重が発生し、同時にボルト自身も弾性的に伸びます。この軸力によって、結合される部品同士が強く押し付けられ、摩擦力が発生します。この摩擦力が、部品のズレや緩みを防ぐ重要な役割を果たします。

トルクが不足する場合: 軸力が不十分となり、部品間の摩擦力が低下します。結果として、振動や外部からの力によってねじが緩んだり、部品がズレたりする原因となります。

トルクが過大となる場合: 軸力が過剰となり、ねじ自体が降伏点を超えて伸びてしまったり、破断に至る可能性があります。また、相手側の部品が破損したり、座屈したりすることもあります。

2. 結合の信頼性向上

適切な軸力が確保されることで、部品間の結合が安定し、外部からの衝撃や振動に対しても緩みにくくなります。これにより、製品全体の信頼性や寿命が向上します。

3. 部品の損傷防止

前述の通り、締め付けトルクが過大になると、ねじの破損だけでなく、締め付けられる側の部品(例:ボルト穴周辺の変形、座面の陥没、母材のクラックなど)にも損傷を与える可能性があります。適切なトルク管理は、これらの損傷を防ぎ、部品の再利用性も高めます。

4. シールの機能維持

ガスケットやOリングなどのシール材を挟んで締め付ける場合、適切な締め付けトルクはシール面の面圧を均一にし、流体漏れを防ぐために不可欠です。トルクが不均一だと、漏れの原因となることがあります。

5. 製品の安全確保

特に自動車、航空機、建設機械など、人命に関わる製品においては、ねじの締め付けトルク管理は安全性の確保に直結します。締め付け不良は重大な事故につながる可能性があります。

締め付けトルクの決定要因

適切な締め付けトルクは、以下の様々な要因を考慮して決定されます。

・ねじのサイズと強度区分: ねじの直径、ピッチ、そして材料の強度(引張強度)によって、適切なトルク範囲が決まります。

・摩擦係数: ねじ山や座面の摩擦係数は、同じトルクを加えても発生する軸力に大きく影響します。潤滑剤の有無や種類、表面処理によって摩擦係数は変化します。

・被締結部品の材質と厚さ: 締め付けられる部品の強度や変形特性も考慮する必要があります。

・使用環境: 振動、温度変化、腐食性雰囲気なども考慮に入れる必要があります。

・要求される軸力: 設計上、どの程度の軸力が必要かによってトルクが逆算されます。

締め付けトルクの管理方法

締め付けトルクは、主にトルク管理できるドライバやトルクレンチを用いて管理されています。トルク管理のできるドライバにはトルクドライバ(ハンドツール)、電流制御のできる電動ドライバ、ねじ締めドライバ(ACサーボ)など、トルクレンチには、設定したトルクに達するとカチッと音が鳴るタイプや、デジタル表示されるタイプなど、それぞれ様々な種類があります。

また、より厳密な軸力管理が必要な場合は、「トルク法」だけでなく、「角度法(ねじの回転角度で管理)」や「軸力計による直接管理」などが用いられることもあります。

まとめ

ねじの締め付けトルクは、単なる数値ではなく、ねじ結合の性能と信頼性を左右する非常に重要な要素です。適切なトルク管理を行うことで、部品の損傷を防ぎ、製品の寿命を延ばし、そして何よりも安全性を確保することができます。技術者や整備士だけでなく、DIYでねじを扱う際にも、その重要性を理解しておくことが大切です。

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