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【連載】DXの本当の意味とは

今回より、株式会社ロードフロンティアの代表取締役 並木 将央 様に、全3回にわたってDXについて解説いただきます。

本日は「DXの本当の意味とは」をテーマに、DXが求められるようになった背景や、誤解されやすいDXという言葉の本当の意味などをご説明いただきます。

 

株式会社ロードフロンティア
代表取締役 並木 将央 成長時代と成熟時代の時代格差や環境変化を取り入れた社会的イノベーションを背景とした事業変革理論を展開し、The Japan Timesの「次世代を担う100人CEO アジア2014」に選ばれた新進のコンサルタント。経営と技術の両面の知識を持ちDXに精通、また現在の世情や人間観をも背景とした多様なマーケティング
と経営手法や理論の活用方法で、企業や各種大学での講演・講義を行うため、幅広い分野での経営・ビジネスのコンサルティングを実施している。

 

 

なぜ DX が求められるようになったのか

はじめに

DX と聞くと、日本人はデラックスを思い浮かべる方が多かった中、盛んに DX!DX!と叫ばれる時代となりました。DX はもう皆様ご存知でしょうか?デジタル・トランスフォーメーションの略です。日本人の感覚で行くと、DT にしたいところですが、変革の意味をもたせるものに関しては X を使うのが英語圏なので、DX となります。
では、なぜ DX が求められるようになったのでしょうか?私は企業研修で DX をお教えする機会も多いのですが、「コロナ禍でリモートワークに移行しようとしたときの弊害を解決しようと考える人が多かったから」という意見が多いです。しかし、DX が注目され始めたのはコロナ禍となる前です。経済産業省は、2018 年 9 月に「DX レポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」を公表し、以降、DX 推進ガイドラインや DX 推進指標を策定、DX 推進に資する施策を展開しています。

 

DX が求められる社会背景を理解しよう

社会背景を理解するのに最も重要なのが人口です。少子高齢化が叫ばれて久しい日本において、人口は年々減っていっているということは皆様ご存知だと思います。では、いつから人口は減少し始めたのでしょうか?

答えは2008 年です。日本は建国以来、人口が増える社会でしたので、今までの人口が増えることを前提としたビジネスができなくなります。ビジネスが従来のスタイルでは行えなくなると、消費者も変わっていきます。消費者が変わるとビジネスも変わっていかなければならないので、どんどん社会が変わっていきます。社会の変化に伴い、人々の価値観は変わっていきました。

ここでは、人口が減少する前の社会を成長社会、減少後の社会を成熟社会と呼びます。

 

成長社会とは

昭和を思い出してもらうとイメージが付きやすいかもしれません。昭和の 3 種の神器と言われたものは何でしたか?

冷蔵庫、洗濯機、テレビですよね。それも今のような電気冷蔵庫や全自動洗濯機やカラーテレビなどではなかったはずです。冷蔵庫の上の段に氷を入れたり、洗濯機の槽内中央の攪拌棒を回したり、白黒のテレビを叩いて直したり…など当時は画期的なものであったとしても、今と比べると不便さがたくさんあります。

こういった不便さを解決してあげれば、企業は儲けることができました。

 

成熟社会とは

しかし、技術が進歩し、冷蔵庫、洗濯機、テレビも今では不便な点を挙げることが困難なほど、申し分ないです。
こうして出来上がった不便さのない社会が成熟社会です。成熟社会では、誰も困っていないのです。よって、不便さが見えないので、企業は何をどうしたら良いのかわからず、儲け方が見えなくなります。そうして言われるようになったのが VUCA です。VUCA とは社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。このような言葉が台頭してくるほど、「どうにかしないといけない!変わらないといけない!」という社会状況だということを理解して次に進みましょう。VUCA の前に人気だったのもイノベーションでした。つまり、変化や革新が求められているのが今の時代です。

 

DX とは何か?

DX が流行る 30 年前、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が盛んに叫ばれていました。BPR とは「業務の本来の目的に向かって、既存の組織や制度を抜本的に見直し、プロセスの視点で、職務、業務フロー、管理機構、情報システムをデザインし直す(リエンジニアリング)という考え方」です。DX と何が違うのでしょうか?説明できますか?
DX は経済産業省が発表した「DX 推進ガイドライン Ver.1.0(平成 30 年 12 月)」によると、IT 専門調査会社のIDC Japan 株式会社の定義を用いて、下記のように定義されています。「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第 3 のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」。
つまり、【顧客、市場の破壊的な変化に対応】【組織、文化、従業員の変革を牽引】【IT 利用してネットとリアル
の両面での顧客経験の変革】の 3 本を整え、そのうえで【新しい製品、サービス、ビジネスモデルで競争上の優
位性を確立】することが求められています。

「顧客、市場の破壊的な変化に対応」ではマーケティングの話、
「組織、文化、従業員の変革を牽引」は人材・組織の話、
「IT 利用してネットとリアルの両面での顧客経験の変革」は顧客経験の話、
「新しい製品・サービス、ビジネスモデルで競争上の優位性を確立」はビジネスモデルを変更する話の 4 つを意
味しているのです。

 

BPR は同じビジネスモデルのままでもいいから、システムを使って効率化・省力化しなさいと言ってますが、DX は IT の活用を通じて、新しいビジネスモデルを確立することが求められています。つまり、顧客のためにビジネスモデルも変えて、価値を創造しなさいと言っています。
しかし、恐ろしいのが BPR を DX と名前を変えて売ってくる企業が多いということです。いえ、企業は悪気がなく、ご認識しているだけかもしれません。そのくらい、誤った認識で DX を用いる人が多いです。経済産業省の「製造業 DX 取組事例集」に記載されている例を見ても、DX と呼べないものも多々あります。デジタル化にはなっているかもしれませんが、DX はトランスフォーメーションしなければならないので、ただデジタル化すれば良いものではありません。顧客が楽しくなるような展開か?を意識して DX かどうかを判断してください。
自社が楽になるだけでは BPR です。

 

複雑な外部環境に対応するには?

先ほど「DX は外的要因(顧客、市場)と内的要因(組織、文化、従業員)に対応しながら、IT を活用し、ビジネスモデルを変革することである」とお伝えしました。ここでは、外的要因である「環境変化」と内的要因である「企業経営」に対応していくための DX をお伝えします。まずは環境と企業経営がどう変わっていったのか見ていきましょう。

 

環境はどう変わるか

2021 年版ものづくり白書によると、製造業のサプライチェーンのリスクとなる「不確実性」は高まる一方だと言われています。加えて、今後、世界各国でカーボンニュートラルや DX の取組が急速に進展していきます。ところがコロナ禍の影響も受け、製造業各企業の売上高、営業利益、設備投資額は減少傾向にあります。今後 3 年間の見通しも減少傾向にあり、依然として先行き不透明な状況が続くでしょう。

 

DX 人財をどう育てていくか

VUCA を背景とした DX 人財育成では、下記 3 つのイノベーションを同時に考えていかなければなりません。ビジネスイノベーション、組織・人材イノベーション、デジタルイノベーション。ビジネス面、組織・人材面、デジタル面どれが弱いですか?ここでの弱さがそのまま、DX を実現するための取り組みにおける内的要因となります。

 

外部要因、内部要因の両方に対応できるプランを考えていきましょう。なお、成熟社会では、物やサービスに溢れている現在、顧客自身が何を欲しいのか明確ではありません。従来は具体的な依頼だったのが曖昧な依頼となってきていませんか?企業は欲しいものが分からない顧客に「欲しい」と思わせなければならなくなっているのです。また、物やサービスのみならず、情報も過多である現在、顧客は無意識に情報の取捨選択をしています。

顧客は共感したものを記憶に残し、購買行動に移しています。だからこそ、顧客の無意識レベルの欲求に提案す
ることが求められ、DX が必要とされています。

 

まとめ

世の中ではただただデジタル化したものを DX と言ってしまっているものも多いです。DX はデジタルを使った「トランスフォーメーション」だということを忘れないように気をつけましょう。